
8.152011
(Facebookページに2011,7,2に投稿したものを転載しております)
皆様、こんばんは。お盆の月曜の夜、いかがお過ごしでしょうか。
今夜は偶々、交通事故の「赤い本」(損害賠償額算定基準)の弊職担当部分(本年は、後遺障害逸失利益です)につき、「自保ジャーナル」という雑誌から参考判例を抜粋する作業を行っておりますので、交通事故について書かせて頂きます。
タイトルの、好意同乗、あるいは無償同乗とは、どのような場面を指すかと申しますと、簡単に申し上げれば、
ある方の運転する自動車に、運転者の好意で、あるいは無償で同乗した人が、運転車両が交通事故を起こしたことにより、同乗者が傷害、あるいは死亡に至ってしまった時、同乗者の損害賠償請求権は減額されてしまうのかどうか
という問題です。
この点、かつては、無償で乗車し恩恵を得ておきながら、自動車の運転者、あるいは所有者に、一般的水準で損害賠償請求をすることは相応しくない、という考え方があり、実際、損害賠償額を減額するような判例もございました。
しかし現在では、単なる好意同乗(無償同乗)のみを理由としては、損害賠償額を減額しないという扱いになっております。
◯ 判決例:被害者が友人運転の乗用車助手席に同乗中、同車が対向車線に飛び出して対向車と衝突し、同乗者が怪我を負った場合であって、同乗者が友人のスピードオーバーを制止、あるいは注意しなかったとしても、同乗者には事故の発生について責任を負っているとみることは困難であるとして、減額を認めなかった事例(京都地裁判決・平成14年9月5日、自保ジャーナル1471号3頁)
では、例外的に、どのような場合に同乗者も責任を問われ、損害賠償額が減額される虞れがあるのでしょうか。
現在では、危険な運転状態を容認、あるいは危険な運転状態を助長、誘発した等の場合には、一定程度の減額が問題となり得る、と解されています。
◯ 判決例:若者だけの仲間による深夜ドライブ中、同僚車をを追い越すにあたりハンドル操作を誤って発生した死亡事故につき、同乗被害者は店員超過、かつ、運転者が終始1人で運転し疲労していたことを知り、またスピードを楽しむ雰囲気の醸成に関与していたとして、損害賠償額の25%の減額をした事例
(東京高裁判決・平成2年3月28日、判例タイムズ754号192頁)
◯ 判決例:同乗者が深夜六本木で運転者と飲食後、自宅へ送ってもらうため運転者運転の車に同乗者が同乗中、ガードレールに衝突して同乗者が受傷した事故について、同乗者は運転者が相当程度酩酊していることを十分分かっていながら同乗したことを理由に、損害賠償額の20%の減額をした事例
(東京地裁判決・平成7年6月21日、交通事故民事裁判例集28巻3号910頁)
皆様も、車両に同乗なさる場合にはご参考になさって下さいませ♪
出典)・ 損害賠償額算定基準(赤い本)(財)日弁連交通事故センター東京支部 / 弊職も委員として、末席ながら編集に携わっております♪
・ 交通事故損害額算定基準(青い本)(財)日弁連交通事故相談センター本部
Copyright © 法律のひろば /弁護士 莊 美奈子 All rights reserved.