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【著作権】 著作権と著作者人格権 - 著作権譲渡・利用許諾契約で注意しよう!

音楽などのエンターテイメントビジネスでも,インターネットビジネス等々,様々な場面で著作権譲渡であったり,著作権利用許諾が行われたりすることが想定されます。sP1060561
その際,いわゆる著作権のほか,著作者人格権の取り扱いが問題となります。
今回は,著作者人格権について簡単にまとめてみます。

著作権は,特許権等の他の知的財産権とは異なり,何らの申請手続をなさずして,著作物が創作された時点で,その著作物を創作した人に,
・ 著作権
・ 著作者人格権
の双方が自動的に成立します。

sP1060569このうち,「著作権」は,財産的権利として,他の様々な一般的権利と同様に,他人に自由に譲渡することができます。
ちなみに,「著作権」とは,複製権,上演権及び演奏権,上映権,公衆送信権,口述権,展示権,頒布権,譲渡権,貸与権,翻訳・翻案権,二次的著作物の利用権をその具体的内容としています(著作権法21条~28条)。

しかし,他方,著作者人格権は,これを譲渡することも,放棄することもできません。
ここで著作者人格権とは,「公表権」,「氏名表示権」,「同一性保持権」の3つの権利の総称ですが,その具体的内容については後述させて頂きます。

sP1060563ただ,この3つの権利の名称からも推測できるとおり,これは著作権を離れて一般的に問題となる名誉権,プライバシー権等の人格の著作権版,とも言えるものであって,著作者人格権はまさに著作者の人格的利益を保護するものです。名誉権,プライバシー権を他人に譲渡したりすることができないこととパラレルに捉えることができましょう。

またそもそも,著作権法が保護対象とする「著作物」とは,① 思想又は感情を ② 創作的に ③ 表現したもので ④ 文芸,学術,美術,又は音楽の範囲に属するもの,に限ると規定されておりますが(著作権法2条1項1号),まさにこのように創作された著作物は,その著作者の思想や感情といった人格に深く根付いており,著作者人格権が他人に譲渡したり放棄することができず,著作者本人に一身専属的に帰属することも然りと言えましょう。

◆ 著作者人格権の内容 : 著作者に一身専属的に帰属する権利

① 公表権(18条) : 自己の著作物をそもそも公衆に提供・提示(公表)するかどうか自体を決定すること,及び,公表の時期や公表の方法(書籍か,新聞か等々)を決定すること。

② 氏名公表権(19条) : 自己の著作物を公衆に提供・提示(公表)する際に,その実名,もしくは変名(ペンネームなど)を著作者名として表示するか,あるいは著作者名を表示しないことを決定すること。

③ 同一性保持権(20条) : 自己の著作物の内容と題号の同一性を保持,すなわち,著作者の意に反した作品の改変を受けないこと。

◆ 著作権譲渡において生じうること

以上述べたとおり,著作権は財産的権利として著作者から他人に譲渡することができますが(譲渡を受けた者は著作権者,となる),著作者人格権は,その一身専属的性質から著作者のもとに残ったままになります。

sP1060567したがって,原則,著作権の譲渡が行われ,著作権者(著作権を譲り受けた者)と著作者(創作者)とが別人となっている場合,ある著作物について,新たに著作権者から当該著作物の利用許諾などを得て,さらに著作物の内容についても改変を考えている方は,当該著作物について,著作者(創作者)の著作者人格権を侵害することになり得ますから,著作権者と,著作者双方の同意・承諾を受けなければならないことになります。

なお,多くの現場で著作権譲渡が行われる場合,著作者人格権が法律上,著作者に分属することが避けられないため,権利錯綜を防ぎ著作権者が自由に著作物を利用することを目的として,著作者人格権の不行使特約,すなわち

(著作権者) は,(著作権者) に対して著作者人格権を行使しない

といった条文を挿入し,リスク回避を図ることが,現場レベルでは多く行われています。

実はこの著作者人格権の不行使特約の有効性については,学説においても無効説があり,著作者が著作権譲渡時には知り得ない未知の改変について,予め包括的に権利の不行使を合意することは人格権の特性に照らせば良俗に反し無効である(斉藤博氏など),という考え方も少なくはなく,また,著作者人格権の不行使特約の有効性が判例上有効であると確立しているか,といえばまた微妙な状況であると言わざるをえません。

しかし現在,著作権譲渡契約を締結するに際し,著作者人格権の不行使特約を挿入しておくことは基本的なリスクヘッジとして行っておくべきであると言えましょう。

( 画像 : 筆者がベルギー,アントワープ駅で撮影しました。)

関連記事

  1. 記事は大変分かりやすく参考になりました。
    しかし、最後の最後で著作人格権の放棄の要求を奨励していることに失望いたしました。
    表現行為は機微に関わるものであり、他者によって意図せぬ改変を加えられること自体、
    著作者に大きな精神的苦痛をもたらします。それ故にこの法律が存在するのでしょう。
    昨今はクラウドソーシングなどでも著作人格権の放棄を求められるのが常であり、
    よってたかって社会ぐるみでこの権利を潰そうとする傾向が顕著です。
    表現行為よりも経済活動の方がより重要であり、優位であるという考えが、その背後に感じられます。
    表現という表現が発信者から奪われ、例えば、平和を訴える目的で作られた著作物が、改変されて戦意高揚に使われるようなことが合法とされる社会を想像すると恐ろしい。
    悪意を持った第三者が表現者を貶めることすら可能となり、我々の自己実現は大いに脅かされることでしょう。弁護士は実務家でありますから、立場によってそうした結論になることも理解できますが、美しいアントワープ駅の映像に悍ましい被写体を合成されてしまったりしない為にも、法律の意図を真摯に汲み取って頂きたいものです。

  2. コメント作曲仮面殿に同感です。かつ、次のように考えるものです。
    憲法第13条(「・・・最大の尊重を必要とする。」)よりも経済活動の方がより重要であり、優位であるという考えが、その背後に感じられます。
    確かに、経済活動そして政治活動は重要ではありますが、これらの活動は「個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利」を最大化する手段たるべきものです。しかも、これらの活動主体は言うまでもなく一人一人の個人なのですから、実務の世界においても、ココを外すと社会正義(平和な社会)の実現は難しいでしょう。

  3. 原田豊 :
    コメント作曲仮面殿に同感です。かつ、次のように考えるものです。
    憲法第13条(「・・・最大の尊重を必要とする。」)よりも経済活動の方がより重要であり、優位であるという考えが、その背後に感じられます。
    確かに、経済活動そして政治活動は重要ではありますが、これらの活動は「個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利」を最大化する手段たるべきものです。しかも、これらの活動主体は言うまでもなく一人一人の個人なのですから、実務の世界においても、ココを外すとなると社会正義(平和な社会)の実現は難しくなると思われます。

    • 生涯映像制作者
    • 2018年 6月 22日

    法律家の方々が著作権を語る時、それはあくまで法律家の立場から語っているに過ぎません。中には「著作者人格権の不行使特約に異論があるなら契約しなければ良いだけです」という杓子定規な意見を言う法律家がいて、一方的という印象を拭い去れません。残念に思います。
    そんな杓子定規な考え方で良いクリエイターと契約を結べるか考えてみてほしい。儲かっていないクリエイターなら「仕方ないか」で請け負うかもしれない。反面、儲かっている優秀なクリエイターは「そんな一方的な契約なら請けない」という結論であろう。それがクリエイターという人種。一流ほど請けないでしょうね。
    良い作品をクライアントが作りたいなら、一方的な契約は良いスタッフを遠ざけ、悪いスタッフを近づける。良い作品を作ることが目的の契約書のはずなのに、いつのまにかリスクヘッジが目的になって悪い作品を作るための契約書に成り下がっていることに気が付かない。まさに自業自得と言うべきか。バカにつける薬なし。

    • 制作現場をリタイアした老兵
    • 2018年 7月 31日

    最近、広告制作の現場を離れました老兵です。
    今回のトピックに関して、非常に簡素に、著作権に関してあまり詳しくない人が見ても理解できる内容になっていて参考になりました。
    いくつかのコメントが上がってきていますが、記事を見て「クリエイターの権利を軽視している」と受け取られているかたもいるようなので参考までに。

    この記事で書かれていることと、貴重な意見を敢えて投稿いただいた方とでは、立っているポイントが違っています。クリエイターカラしてみたら「著作者人格権放棄???」って読めてしまうのは当然ですが、一方でクリエイターの力を借りたいと願っている企業担当者からすれば、最低限知っておかなければ、無知が原因で後々にトラブルになってしまう内容だと思っています。

    例えば、音楽や映像を一流のクリエイターに依頼した場合、寄せられているコメントのような考えは当然理解できますが、例えば会社のロゴを新しくしたい、会社のCI&VIをリニューアルしたい、みたいな場合ではどうでしょう?
    出来上がったロゴをこれから日本中のあらゆるところで、世界中のあらゆるところで企業活動のため、企業の成長のために使いたい、と願ってお金を出し、制作してもらった会社のロゴになりますが、それに著作者人格権がついて回ったら、いろんなところで制約が出てしまい、企業活動に支障をきたすことになります。

    著作権に関して、企業の担当者は何も知りません。契約内容をロクに確認もせずに「お金を払ってるんだから自分のもの」と言い張ってトラブルになる例をゴマンと見てきました。プロジェクトを取り仕切る広告代理店の営業やプロデューサーも、「クライアントから言われていないので、権利の調整とかしていない。契約書に記載していない」ってしれっという人が山のようにいます。コンペ案件では金額を抑えるためにわざと入れないで、トラブルになりそうになったら逃げるか、「そこは範囲外なので、買取は別料金」とクライアントに後出しでいうのなんて日常茶飯事です。

    そんな広告制作の現場を見てきているわたしからすると、ポイントが簡素に書かれていて、あいまいなところがない分、よく書かれていると思っています。この内容を正しく理解している企業担当者がPJリーダーになっているとすれば、トラブルは起こらないでしょうね。オリエンの段階で不使用条項に言及してくるでしょうし、その条件でもコンペに参加したいっていってくれるクリエイターとお仕事をするので。

    正直、このページの荘先生のことは全く存じ上げていませんが、略歴を見る限り、フランチャイズ関連の法律業務を多く経験されているので、その過程で今回の記事に書かれている著作権にまつわるトラブルに立ち会ったのでしょう。中小企業の社長さんが「うちが金出してるんだから」的なことを大声で叫んでいる姿が目に浮かびます。

    クリエイターの社会的地位を間接的に貶めるのではなく、無知が起因するトラブルを減らすため記事なんだと思って再度読んでもらえると印象が変わるかもしれませんよ、という老爺心でした。

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