
9.52014
こんにちは。
最近よく,色々な場所で,
「Facebookで集合写真を撮るときにテレビの画面が入ってしまったんだけど,著作権侵害(複製権侵害)になりますか?」(テレビ画面につき)
「アメブロに自室のインテリア写真を載せたいんだけど,壁に掛けたポスターが写りこんでしまっているのは,著作権侵害(複製権侵害)になりますか?」(ポスターにつき)
と尋ねられることが多いので,綴ってみます。
著作権法の大原則では,著作物の複製権(コピー作製権)は,著作者(あるいは著作権者)が専有(独占)していて,他の者が勝手に複製してはならない(多少手を加えて改変したとしても)ことになっています。
しかし,前述した写り込みについて,過去に「雪月花事件」(東京高裁平成14年2月18日)という判決が出されました。
それは,照明器具のカタログを制作するに際し,照明器具を撮影対象として和室を撮影したところ,背部の床の間に掛けてあった書画(雪月花という書家)が写りこんでいたことについて,当該書画の著作権(複製権)侵害になるのではないか,と争われた事件です。
これに対して裁判所は,カタログ写真からは,書の著作物としての本質的特徴が再現されていない(墨の濃淡,筆勢など),特徴的部分が実質的に同一であると感知しうる程度に再現されていない,として著作権(複製権)侵害に当たらない,としました。
しかしここでまた問題が生じます。
写真の精度が高くて,書画の本質的特徴が再現されていたら,照明器具カタログを目的とする写真でも書画の著作権を侵害するのか,という懸念です。
このような懸念・不安に対応するかたちで,著作権法の平成24年度改正30条の2で,「付随的著作物の利用」を新設して,写り込みが著作権侵害に当たらない場合があることを定めました。
30条の2の概略としては,写真や動画の撮影等をする際に,写真等撮影の対象とする事物,あるいは音から ”分離することが困難” であるために,付随して写り込んだり録りこまれたりする著作物(前述の判例の掛け軸など。付随対象著作物)については,当該創作(写真や動画の撮影等)に伴って複製・翻案し,さらにこれらを利用(写真なら展示などの場面が多いとおもいますが)することができる,というものです。
そしてこれは,営利目的,非営利目的を問いません。
ただ,気をつけなければならないのは,この新設条文の趣旨は,写り込み,入り込みする付随対象著作物を形式的には複製していることにはなっているものの,利用の質や量が軽微な場合に限って実質的違法性が無いものとするものであり,写り込みや入り込み全般を,著作権侵害にならないのでOK,とするものではありません。
写り込みや入り込みした著作物の著作者に不当に発生する損害等も考慮されなければならないと条文は規定しています。
前掲した30条2の概略のとおり,法律は,- 写真の撮影等の対象(目的,集合写真ならその人々)とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物 -に限って当該写真等の利用に伴って利用できるとするものであって,
・ 「分離することが困難」とは,付随対象著作物(掛け軸,テレビ画面,ポスター等々)を除外して創作(集合写真の撮影,インテリアの撮影など)をすることが社会通念上困難であると客観的に認められることを意味し,また,
・ 付随的対象著作物(掛け軸,テレビ画面,ポスター等々など)は当該写真等著作物(集合写真だったり,照明機器カタログだったり,インテリア撮影だったり)における軽微な構成部分となるものに限る
としており,ある程度慎重に解さなければならない問題であることに十分留意されればと思います。
これをご参考に,Facebookやアメブロなどへの写真のアップロードをなさって頂ければ幸いです。
(※ 写真はエストニア共和国タリンにて,筆者が撮影)
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