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【刑事事件】 殺意はどうやって認定するのか。(情況証拠の積み重ね)

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  こんばんは。週末日付変わって土曜深夜、如何お過ごしでしょうか。
本日は、ちょっとショッキングなタイトルで申し訳ありません。
  私の現在の業務は9割以上民事一色で、たまにクライアント企業様の社員の方が刑事事件に巻き込まれたり、刑事当番弁護士が回ってきた時に受任したりする程度になってしまっていますが、11年前の司法修習生時代(私は苦労して何とか旧司法試験に合格したタチです)では、当初検察官志望で、検察起案(検察官の起訴状起案)、刑事裁判起案(刑事判決書起案)が割と得意でした♪

で、ちょっと民事で調べたいことがあって、とある会社法の書籍を探して自宅の本棚を漁っていたのですが…修習当時に読み込んでいた書籍や、自分が起案して添削されたものなどが出て参りまして・・・その時、色々な証拠を修習所から渡されて、時間制限(だいたい午前10時~午後4時)があるなかで、証拠を読み通したうえで、「裁判官として、この被告人に殺人罪の刑を下すのか。-被告人に ”殺意” があったと認定するのかどうか。」を争点として判決書を起案する、という問題が出題されたことがあったのを思い出しました。
・・そういえば、弁護士になって2年目ぐらいに、当番弁護士で過失致死(殺意はないが、被害者が亡くなってしまった)の事案が回ってきて、何度も遺族にお詫びに上がったことがあったっけ・・・初回は水ぶっかけられたことをよく覚えています。最後の方は、「貴女も頑張っているから。」と仰って頂きましたが・・。

さて、本題に入りますが、一般の方々に分かりやすいようにざっくりと簡略化して書かせて頂きますので、ご専門家の方、間違っておりましたらフォローお願い申し上げます。

殺人事件には、勿論、強い動機や目的があって(確定的殺意があって)殺人を犯し、殺意を自白しているような事件もございますが、その反面、殺人行為を犯してしまった時は非常に興奮し、激情しており、犯行を犯した当人が後から自分の認識を振り返ってもはっきりしないような事案も非常に多いようです。

このような事案では、被告人(被疑者)が、相手を殺してしまった時、未必的故意(=相手が死ぬかもしれないが、死んでも構わないという認容の程度の場合)があったかどうかが大きな問題となります
(*殺人の故意がなければ傷害致死、過失致死等になり、量刑が大きく異なります。)
このような事案では、いわゆる情況証拠の積み重ねから、故意の有無を認定することになります。

それでは、具体的に、どのような情況証拠があると、殺意を認定する方向になるのでしょうか。以下、概略で箇条書きに挙げて参ります。

・ 被害者の受傷の部位 ; 頭部、頸部、頭部、心臓部など、損傷を受けると死亡に至る可能性が多い部位 ⇒ 殺意を認める方向へ。
・ 受傷の程度 ; 刃物による場合、受傷が刃物の長さに比べてかなり短い場合 ⇒殺意を否認する方向へ。
・ 受傷の打撃の強さ(犯行者の加力の大きさ。こめた力の強さ); ⇒傷の深さがさほどでなくても、骨の部分に当たっているとき、骨の内部まで刃先が及んでいる場合、根本まで血痕がついている場合 ⇒殺意を認める方向へ。
・ 犯行者と被害者が格闘中のなかでの死亡 ⇒ 犯行者の力に、被害者の力が加わって、犯行者の予想外の力が創傷にかかる場合がある ⇒殺意の判断に慎重になるケース。
・ 用いている刃物の形状 ; 先端の尖った刃体、刃渡りが約10㎝以上の刃物が用いられた場合 ⇒ 殺意を認める方向

・ 絞殺、射殺、毒殺(相応の劇薬) ; そもそも行為態様事態が殺意を伺わせる ⇒殺意を強く推認する方向になる。

・ 犯行者と被害者の人間関係 ; 両者の知己の程度、特に知己の間に相手に対して鬱憤を抱きながら抑圧していたような形跡がある場合 ⇒  殺意を推認する方向

・ 犯行後に犯行者が被害者を傍観、あるいは放置して立ち去った場合 ⇒ 殺意を推認する方向

・ 犯行中、「殺してやる」等の言葉を発していた場合 ⇒ 当然ながら殺意を推認する方向になるが、単なる脅し目的の場合も少なくないため、慎重な検討を要する。

一つ一つの要素を見ると、当たり前の方向とお感じになると思いますが、一つ一つの殺人事件においては、それぞれの要素が逆ベクトルを向いていたり、複合的な要素が当然ながら生じて参ります。
したがって、これらの要素を細かく証拠から採取し、複合的に、総合的に、慎重に検討しながら(特に、前述のベクトルがあっても、それを例外的に捉えて排除すべき要素があるのではないか等)、”殺人の故意(殺意)を認めるかどうか” を判断していくことになるのです。 

以下は私見になりますが、職業裁判官は、このような情況証拠の積み重ねによる事実認定の訓練や研鑽を相当数積んでいます。しかしながら、我が国は、「量刑部分」に限らず、「事実認定」の部分にまで、民間人による裁判員制度を認めてしまいました。
 私は、この制度は、殺意の有無一つを認定するだけにおいても、極めて危うい制度であると考えています。

なお、直近に起きました、京都での悲惨な自動車による人身事故に関連し、自動車が殺害の道具となった場合については、人や二輪車のように不安定な情況の被害者に対して、意図的に(失神してアクセルペダルを踏みっぱなしにした状態だったり、冷静な判断ができずアクセルとブレーキを踏み間違える場合等に当たらない場合)、相当な速度(時速45キロメートルの大型四輪車、時速90キロメートルの普通乗用車)で衝突した場合には、殺意が推認されるベクトルになります。

以上、ご参考になれば幸いです。

* 参考資料 : 司法修習生用教材・白表紙
刑事判例事実認定-裁判例の総合的研究(上巻)(小林充・香城敏麿著・判例タイムズ社)

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