
8.192014
皆様,お世話になっております。
長らく記事の更新ができず,ご覧下さっている方々には申し訳ありません。
今回は,タイトルの件について,基本的な部分を綴りたいと思います。
プロバイダ責任法という言葉は周知のものとなり,一人歩きをしている感がありますが,実際,自分が第三者に個人情報漏えいや名誉棄損をネット上でやられたら,どのような手続きが準備されているのだろう,ということはあまり周知されていない感があります。
そこで,以下,簡単にまとめてみます。
★ そもそも,なぜプロバイダ責任法ができたのか?
第三者がどこかのウェブサイトの掲示板に貴方の個人情報を流したり,どこかのサーバーにウェブサイトを立ち上げて貴方の名誉棄損を行ったり,という事案があったとします。
基本,ウェブサイトのプロバイダやサーバー管理者はその内容を検閲したり選別することなく機械的に,これを情報公開し,大勢の方が自由に受信することになりますね。
従来の民法等の大原則であれば,貴方にプライバシー侵害,名誉棄損,あるいは著作権侵害等を行っているのはプロバイダやサーバーではなく,第三者の発信者(書き込んだ者)です。
したがって,貴方は得体も知れない発信者を探して,協議して削除要求をしなければならないという,現実的に極めて困難なことをしなければならなかったのです。
そこで国は,プロバイダ等責任法(通称)を立法し,被害者である貴方が,プロバイダ等に対して,当該問題情報の漏えい防止の要求,そして発信した側の情報(特定)の要求をできる場合があるように認めた,というのが経緯の一つです。
★ そもそも,プロバイダ等が特定できないのですが。。
→ 当該問題情報が設置されたIP,URL情報を用いて,「Who is」(誰でも利用可能)
・ http://whois.jprs.jp/ (JPドメインなど)
・ 海外のは検索すれば同様の複数サイトが現在存在します。・・・ただし海外サイトについては,実際の削除措置が迂遠になるのも事実。
★ その後,プロバイダにどう対応すればいいの?
1) 貴方(=申立者)は,プロバイダに対して,送信防止措置等の要求( ※ 作成書式有り,本サイト図書館に収録し,本コラム末尾にリンクを貼ります)をします。
2) プロバイダは,貴方から提出された申し立てを検討します。
→ プロバイダが自主的に削除を要すると判断すれば,発信者(個人情報等記載者)に対し,プロバイダの自主的削除措置を取ります。(勿論,発信者に自主的解決を促し,発信者自らが削除をすることも可能)。
→ プロバイダにとって自主的削除判断が困難な場合は,プロバイダは発信者(問題記事を掲載した者)に照会手続きをします(侵害情報の特定等々)。
配達記録郵便等で,削除措置をしても差支えがないかどうか照会するわけです。
3) プロバイダが発信者へ照会手続きをしてから7日以内に発信者から反論がなければ,プロバイダは問題記事について削除措置をとることになります。
※ ただし,平成19年2月にプロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会によって「プロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドライン」が出されるまでは,発信者情報開示請求に対しては訴訟をしないと開示しない,というプロバイダが頻発していました。ガイドライン公表後は状況は変わり,出てくるようになりましたが,訴訟等(ここでは詳細は省きますが,同時にログを削除しないよう仮処分も)を要する場合があるのも実情です。
また,一般個人ではなく,代理人弁護士からの開示請求の方がプロバイダも開示してくる,という傾向が強いことも否めません(プロバイダ側も責任等を回避したいという思惑があるのでしょうか)。
この問題は,この手続きで済まない場合も残念ながら多く,プロバイダへの訴訟等も提訴されており,昨年平成25年9月に東京高裁では,インターネットのサイト等に掲載されていた申立人(原告)を誹謗中傷する記事がインターネットの別サイト上(2ちゃんねる)に転載されたことについても,プロバイダ(2ちゃんねる)に名誉棄損があったとするとともに,発信者情報の開示も行うべきと判断するなどのほか,数多くの裁判例がありますが,また改めて別の機会にまとめたいと思います。
★ 書式集
( いずれも本サイト図書館に収録しておりますが,JAIPA等が作成,公表したものです。また別途,民間企業が公表しているものもありますのでご参考になされればと思います。)
PS: 挿入写真はいずれも,筆者自身がシドニーで撮影したものです。
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