
8.262014
こんばんは。
ここのところ,ウェブサイト上での名誉毀損コラムが続いておりますが,今回も類似テーマです。
よく2ちゃんねるなどの匿名サイトで,特定のハンドルネーム(以下,HNとします)の方の書き込みが炎上し,さらにはそのHNの方の個人情報が晒される,という事態が頻発しています。
難しいのは,名誉毀損やプライバシー侵害というのは,特定の限定された個人に対して行われることによって成立する不法行為であり,HNで発言しているものがこれに該当するのか,というのが大きな壁になります。いわば架空空間上で未知の人とやりとりをしているわけですから・・・。
また,HNを使っている人が,掲示板等の利用者によって特定できない人であれば,その人の社会的評価は毀損されていないことにもなります(不法行為に当たらない可能性)。
よく知られている訴訟としては,ニフティサーブ第1事件(控訴審)があります。( 東京高裁平成13年9月5日付判決)
これは,「COOKIE」なるHNを用いた方がいらしたのですが,ニフティ側が定期発行している雑誌で「COOKIE」なる者の個人情報を明らかにし,ニフティフォーラムに加入している者なら誰でも「COOKIE」が特定人物であることを知り得る状況でした。
そこに,ある会員が,この人物の社会的名誉を貶める名誉毀損の発言をし,(「COOKIE側の主張事実」)たことが争われており,これに対して裁判所は,「COOKIE」なる者が十分に反論できるような俎上も醸成されておらず,また「COOKIE」なる人物も不特定多数の中で特定人物を認識できる状態にあり,匿名性は確保されていない,としてニフティに削除依頼をするよう判示しました。
また,逆に,平成13年8月27日付東京地裁では,パソコン通信フォーラムの論争で,論争の相手方が相手方の本名の一部をHNとして用いたことがプライバシー権侵害となるとして,サービス事業会社に相手方の氏名等開示と損害賠償を求めた事案で,裁判所は,一般の読者はHNを特定の人物の名前を差しているとは考えないだろうこと,HNが被冒用者(使われた者)とは必ずしも一致していないこと,被冒用者がフォーラムの会員の一部に本名でメールを発信しており,匿名性の維持を不可欠の条件として希望していたかどうか疑わしいこと,などからプライバシー侵害は認めませんでした。
これらの判例を比較すると,HNで匿名性を維持していた場合,本人が特定可能な場合は,名誉やプライバシー侵害があったと認めらルことができるが,HN本人自ら本名等を公表している場合には判断が異なる,ということになりましょう。
なお勿論,これらの前提として,相手方の記載内容が,名誉毀損,侮辱罪に該当するものであることが重要です。
以上,ご参考になりましたら嬉しく思います。
(※ 写真はいずれも,筆者が自らヘルシンキで撮影したものです。)
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