
9.72014
東京では霧雨模様の,鬱陶しい気候の日曜の夕方ですが,こんばんは。
私はよく,全く他業種の方々が,例えば趣味を介して集まるオフ会とかに参加させて頂くのですが,その際などに,当職が弁護士であることが明らかになると,日常・一般的な質問などをされることがあります( 勿論,弁護士費用が発生しない程度のもの)。
私は民事を専門にしている弁護士で,顧問先企業さんがかかわる場合や,IT分野等での刑事絡み以外はあまり取り扱わないのですが,先日,電車内で隣の女性が痴漢被害にあっていると思われる現場に出くわしたが,女性は耐えているようだったし,被害者当人ではない自分はどうしたら良かったのか,痴漢者を捕まえて良い根拠は?という趣旨の話題がでましたので,刑事訴訟法(刑事手続きを定めています)上認められている3場面の逮捕手続きについて簡単に綴りたいと思います。
(1) 通常逮捕 : 裁判官が発付する,逮捕状による逮捕。
よく刑事ドラマで,刑事がホシに紙を示して罪状を読み上げて身柄拘束する場面が出てきますが,これがその部類に入ります。
被疑者が犯罪を犯したことにつき嫌疑に相当性があり,逃走や証拠隠滅の恐れがある場合に限られます(逮捕の必要性)。さらに,一定の軽微犯罪については出頭要求に応じないなどの逮捕の必要性が大きい場合に制約されています。
通常逮捕では,検察官または警察官(詳細には令状請求できるのは警部以上。逮捕自体は階級は無関係)が裁判官に逮捕令状を請求し,裁判官が逮捕の理由と必要性を審査して逮捕状を発付することになっています。
令状請求は24時間いつでもあり得ますから,警察官も大変ですが,令状当番の裁判官も大変ですね!
(2) 現行犯逮捕 : 誰でも逮捕状なくしてできる逮捕。
前述した痴漢行為の最中の犯人を,これに気づいた近隣の人が逮捕する場面などがこれに当たります(要するに,前述の場面では痴漢現場に居合わせた方は逮捕ができたわけです)。
ただこれは,裁判官が審査して発付する令状なくしての逮捕ですから,現行犯の限界が問題となります。
今犯罪を行っている者については問題なく逮捕可能ですが,逮捕しようとした者が犯人を捕り逃がしてしまったものの,その後も犯人を継続して追跡していた場合には,最高裁は現行犯逮捕の適法性を認めていますが,追跡が中断してしまった場合には現行犯逮捕はできないことになっています。
(3) 緊急逮捕 : 裁判官による令状発付なくして,捜査官が特別な条件のもとに行う逮捕。
死刑,無期懲役,または長期3年以上の懲役・禁固の犯行を行ったと疑うことができる充分な理由(※ (1)の場合よりも高度な嫌疑の存在)があり,急速な逮捕の必要性があり裁判官の令状発付を求められない場合にのみ認められる逮捕です。
裁判官の審査を経て令状発付を受ける,(1)現行犯逮捕,の例外的な強制処分ですから,捜査官は逮捕後即刻に裁判官から逮捕状の発付を受けなければなりません(逮捕状請求権者は警部以上云々の制限はありません)。
以上の(2)のとおり,一般人による現行犯逮捕には刑事訴訟法上の法的根拠がありますので,現行犯を現認した場合には,あくまでもご自身の身の安全を第一に現行犯逮捕ができることをご留意頂ければと存じます。
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