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【労働法】労働基準法が定める労働時間とは ~ 判例などを参考に

(Facebookへ2011,6,4に投稿した記事を転載しております。なお、現在におきましても適用されるものでございます。)

今回は、労働基準法が規制する「労働時間」とはどのような時間を指すのか、その限界事例を判例などを参考にまとめてみたいと思います。

ご存知のとおり、労働基準法は原則、使用者は労働者を、休憩時間を除き、1日8時間を超えて、また1週間につき40時間を超えて労働させてはならないと定めています。

このため、「労働時間」とはどのような時間を指すのか、が問題になって参ります。

この点、「社会労務保険ハンドブック」(社会保険労務士会編)などにおいては、

・ 労働時間とは、休憩時間を除いた実働時間をさす。

・ 実働時間とは、労働 者が現実に労働に従事している時間だけでなく、労働者の労働力がなんらかの形で使用者の指揮命令下におかれている時間をいう。

・ 実際に作業を行う実作業時間だけに限られず、作業の準備・整理を行う時間や、作業のために待機している時間(いわゆる手待ち時間)も、労働時間に含まれる。

と定義づけられています。

それでは実際、判例等ではどのような時間を労働時間と認め、どのような時間は労働時間に含まれないとしているのでしょうか。

【労働時間と認めている例】

・ 更衣所等において、労働者が着用を義務付けられている作業服・保護具などを着用して準備体操場まで慰労する時間、作業場から更衣所に移動してそれらを脱着する時間(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁判決)

・ ビル管理者の仮眠時間につき、本件仮眠期間中、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられている場合(大星ビル管理事件・最高裁判決)

・ 休憩時間中でも、来客当番として待機している場合(行政解釈。昭63.3.14、基発第150号)

【労働時間には含まれない例】

・ 入退門から更衣所までの移動時間、終業後の洗身等の時間(使用者の義務付けや通勤上の特別の必要が無い場合)(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁判決) 

・ 始業前10分間のラジオ体操について、参加は従業員に強く奨励されていたが、義務付けられていたまでは認定できなかった場合(大阪地裁、住友電気工業事件)

・ 出張の移動時間

※ ただし、会社に立ち寄ることを命じられ、会社から出張先に向かった場合、上司と共に移動している場合等については労働時間とみなされると考えられています。

以上、ご参考になれば幸いです。

(参考)
・ 「社会労務保険ハンドブック」(社会保険労務士会編)
・ 「新労働事件実務マニュアル」(東京弁護士会労働法制特別委員会編)

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