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パック旅行(募集型企画旅行)の旅行トラブルと留意点について

今年は暦上10連休となったGW、多くの皆様が国内旅行、あるいは海外旅行にお出かけになられたことと思います。
ホテルや航空券の自己手配が容易になった現在、ネットでこれらを自己手配して完全個人旅行をなさる方も増えましたが、やはりプロの旅行会社にお任せでストレスフリーで移動できるパック旅行にも安定した人気が集まっています。
しかし旅行者が増えるにつれ、パック旅行における旅行トラブルについての法律相談も増えて参りましたので、コラムとして綴りたいと思います。

1)はじめに 〜 標準旅行業約款について
 旅行業者は、旅行業者との契約に関して旅行業約款を定めたうえで観光庁長官の認可を受けなければなりませんが(旅行業法12条の2)、観光庁長官が定めて公示した標準旅行業約款を用いれば認可を受ける必要がないため(旅行業法12条の3)、ほぼ全ての旅行会社はこの標準旅行業約款と同一の約款を旅行業約款として用いています。

 したがって、パック旅行での旅行トラブルはこの標準旅行業約款の「募集型約款」の項に基づいて解決されるべきこととなり、重要な指針となります。
 このコラムでは、多くあるトラブルのうち、
① 旅行契約で決まっていた内容が旅行直前に変更された場合。

② 旅行会社により実施された旅行内容が、旅行契約で決まっていた内容と違っていた場合。
③ 旅行実施前に旅行会社が倒産した場合。
をピックアップします。
標準旅行約款

① 旅行契約で決まっていた内容が旅行直前に変更された場合。
 旅行契約内容につき旅行会社は参加者に対して、
・ 契約締結前に「取引条件説明書」
・ 契約時に「契約書面」

・ 旅程日程確定時に「確定書面」
を交付する決まりとなっております(書式自体は各旅行会社が独自のものを用いています)。また、パック旅行募集パンフレット、募集広告に記載されている事項も契約書面の一部となるものと解釈されています。

* 旅行会社が旅行内容を変更できる場合
 天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等のサービス提供中止、官公署の命令等の旅行業者の関与し得ない事由が生じ、旅行の安全かつ円滑な実施を図るために止むを得ない場合には、旅行業者は旅行参加者に予め説明のうえで、変更範囲を最小限にとどめる努力義務を負いつつ旅行内容を変更することができます。

* 旅行参加者が旅行契約を解除できる場合
 変更内容が重要なものである場合は、旅行参加者はキャンセル料を支払うことなく旅行契約を解除することができます。

 「重要なもの」に該当するものとして、前掲「標準旅行業約款」中の「募集型約款別表2上欄」に 以下の事由が列挙されています。
・ 旅行開始日又は終了日の変更
・ 入場する観光地や施設(レストランを含む)の変更
・ 運送機関の等級又は設備のより低い料金のものへの変更(変更後の等級及び設備の料金の合計額が契約書面に記載した 等級及び設備のそれを下回った場合に限る。)
・ 運送機関の種類又は会社名の変更
・ 日本国内の旅行開始地空港又は旅行終了地空港の異なる便への変更
・ 日本国内と国外との間における直行便の乗継便 又は経由便への変更
・ 宿泊機関の種類又は名称の変更
・ 宿泊機関の客室の種類、設備、景観その他の客室の条件の変更

② 旅行会社により実施された旅行内容が、旅行契約で決まっていた内容と異なっていた場合
* 旅行開始後に、契約書面記載の旅行サービスのうち重要な部分についてサービスの提供を受けられなかったときには、その受領できなかった部分について旅行参加者は契約を解除して相当部分の代金請求をすることができます(但し、旅行業者にとっても不可抗力であった場合の特例あり)。

* 旅程保証 : 旅行業者が旅行参加者に対し一定の範囲(前項の「募集型約款別表2上欄」列挙事項)につき旅程どおりに旅行が催行されることを保証し、保証したとおりに催行できなかった場合は、旅行業者の故意・過失の有無を問わず、旅行代金に所定の率をかけた額(1%〜5%。合計で15%が上限)以上の変更補償金を旅行参加者に支払うことを約束する制度があります(天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等のサービス提供の停止等の事由がある場合は除く)。

* 旅行会社に債務不履行責任(故意又は過失があること)があり契約内容どおりの旅行ができなかった場合 : 旅行参加者が旅行会社の過失や説明義務違反等を立証して損害賠償請求ができる場合があります。航空券のダブルブッキングにより帰国便が変更となった事例で、旅行会社が早期に航空券手配を行っていれば防げた場合など。

* 消費者契約法の「不実告知」(4条1項1号)による契約取消 : 旅行契約内容の「重要事項」について旅行会社の「不実告知」(客観的事実と異なる説明をすること)があった場合に限り、旅行参加者は契約の取消ができます。例えば、露天風呂の有無、宿泊部屋の眺望の有無などが旅行参加者の宿泊先選択理由となっていた場合など。
契約の取消が認められる場合には、旅行参加者から旅行会社に対して支払済みの旅行代金の一部返還を求めることになりますが、求めうる範囲の判断については複雑な法律的問題、及び専門知識が必要ですので弁護士に相談なさることをお勧め致します。

③ 旅行実施前に旅行会社が倒産した場合。
 我が国でも最近、「てるみくらぶ」の自己破産により多くの旅行者が損失を被ったことは記憶に新しいところです。
旅行者が受けうる保証制度は以下のとおりです。


* 営業保証金制度からの弁済(旅行業法17条):旅行業者が登録業者である場合、旅行業協会(JATA,ANTA)の正会員以外の旅行業者と旅行業務に関して取引をした旅行者がその取引によって生じた債権について、旅行業者が国に供託した営業保証金から一定の範囲で旅行者に弁済する制度。

* 弁済業務保証金制度からの弁済(旅行業法22条の9):旅行業協会(JATA,ANTA)正会員である旅行業者(保証社員)と旅行業務に関して取引をした旅行者がその取引によって生じた債権について、旅行業協会が国に供託した弁済業務保証金から一定の範囲で旅行者に弁済する制度。

これらの保証金制度の具体的内容については、観光庁のパンフレットが参考になります。
001226281


* ポンド保証制度(ポンド保証規程17条) : 旅行会社がJATA正会員かつ海外募集型企画旅行を取扱う第一種旅行会社であって、ポンド保証制度(任意加入)に加入している場合には、旅行会社が法定弁済制度にプラスして自社の負担で一定額の「ボンド保証金」をJATAにあらかじめ預託しておき、自社と取引をした旅行者に対してJATAが弁済をすることになった場合、「法定弁済限度額」と自社「ボンド保証金」の合算額を実際の弁済限度額とすることで消費者保護を拡充する制度。


 以上概略を綴りましたが、これらの制度があることを知識として持ちながら旅行を楽しまれることをお勧めします。

お困りの際には、お一人で悩まずお気軽にご相談下さい。 

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