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父母の離婚にともなう子の面会交流 ~ 間接強制を見据えた条項の定め方など

夫婦が別居や離婚によって親が子どもと離れて暮らすことになってしまった場合、父母間の協議を原則として親子が面会その他の交流をするために必要な事項を定めることとなっています(民法766条1項)。この場合においては、この利益を最も優先して考慮しなければなりません(同条同項)。

夫婦が離婚に至ったとしても、子から離れて暮らす父親あるいは母親は、子ども自身にとっては父母であり続けるのであり、また限られた時間であったとしても子どもが離れた親との交流を持ち続けて愛情やサポートを受け続けることは子どもの成長にとってかけがえのない大切なことです。しかしながら、協議離婚においても、あるいは家庭裁判所における調停離婚においても、夫婦間の関係が良くない状態での面会交流条項のとりきめになるため条項内容の作成作業は容易なことではありません。

子の面会交流の実施要領の策定にあたって留意する点とは

① 日時等 : 毎月の面会交流については、「毎月第2土曜日」の定め方をするほか、「夏季休暇中の5日間」などの定め方をする例が多いです。但し後述するとおり、可能であれ ば「午前10時から午後4時まで」というように時間も定めておいた方が望ましいでしょう。


② 子の引き渡し方法や面会交流実施場所など : 子どもの年齢に合わせて、子の引き渡し場所( 第三者機関の支援サービスを利用する場合には、援助の内容や料金の負担などについても取り決めておくことが望ましい)、及び、面会交流を行う場所( 将来にわたることなので特定の施設を指定することは現実的ではありませんが、相手方親の自宅なのか、あるいは自宅以外の場所で公園やレストラン等なのかなどを定めておくことが多いです)。

③ 実施要領の将来的変更など : 子どもの成長や、父母の生活環境の変化に合わせて面会交流に弾力性をもたせて実施継続が可能となるように、父母が協議をして面会交流の実施要領を変更することができるように条項を入れておくことが多いです。

間接強制を見据えた面会交流実施要領の策定の必要性

夫婦が離婚する際に面会交流実施要領を取り決めた場合であっても、残念ながら離婚後に面会交流が円滑に行われない場合も少なくありません。

特に、非監護親(子と離れて暮らす親)にとっては、面会交流が実施要領どおりに行われないことは、子との限られた繋がりさえも断たれることとなり精神的にも辛い状況になります。
この場合、非監護親はまず家庭裁判所に履行勧告の申立を行い、申し出を受けた家庭裁判所は面会交流の現在の履行状況を調査したうえで、監護親に対して面会交流をきちんと実施するよう勧告します。

しかしながら、監護親が家庭裁判所の履行勧告にも応じようとしない場合には、非監護親としては、監護親に心理的強制を加えることで面会交流の履行を自発的に行うように促す「間接強制の申立」を裁判所に行うことを検討することになります。
簡単に申せば、監護親が面会交流を実施しない場合に一回あたり一定額を監護親が非監護親に支払うよう裁判所に命じてもらう手続です。
ただし間接強制の申立を行えば、監護親と非監護親との関係がさらに悪化してしまい、子がその間で精神的に板挟みになったり、逆に非監護親に対して不信感を抱いてしまう事態を生じるおそれもあり、そもそも面会交流が子どもの利益を最優先に考えるべき制度であることからも慎重を期する必要があります。

なお最高裁は、面会交流についても間接強制決定をできる場合があると判示していますが(最高裁第一小法廷平成25年3月28日決定)、間接強制ができる場合の要件については面会交流実施要領がある程度具体的に定まっていることを求めており、

「 面会交流は月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとする、面会交流の場所は父(非監護親)の自宅以外の父が定めた場所にする、送迎の場所は母(監護親)の自宅以外の場所を父母が協議して定め、協議が整わないときは、〇〇駅の改札付近とする、子どもの病気などのやむを得ない事情があるときは代替日を定める」等の内容を定めていた事例では、実施要領は、面会交流の日時、各回の面会交流の長さ及び子の引渡しの方法の定めにより母(監護親)が面会交流に際して行うべき行為が十分に特定されているとして間接強制決定を認めています。

しかしながら、
「母に対し、父が子どもと1か月に2回、土曜日又は日曜日に、1回につき6時間の面会交流をする」等の内容のみを定めていた事例では、面会交流の頻度や各回の面会交流の時間の長さは定められているが、子どもの引渡し方法については定められていないから、母(監護親)が面会交流に際して行うべき行為が十分に特定されているとはいえないとして間接強制決定をすることはできないと判断しています。

したがって、面会交流実施要領の策定にあたっては、特に非監護親となる場合には間接強制の可否についての上述の判断に留意しておく必要があります。 このように、面会交流実施要領の策定や間接強制の申立の問題には専門的要素が多く含まれますので、是非弁護士にご相談なさることをお勧め致します。

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