
2.12020
インターネット、及びソーシャルネットワークサービス(SNS)の一般的普及に伴い、SNS上の投稿による民事的責任がしばしば問題となるようになりました。
特に名誉毀損、信用毀損、業務妨害、著作権侵害等が多く争点となりますが、今回はTwitterのRT(リツイート)と民事上の名誉毀損の成否につき取り上げたいと思います。
あらかじめ簡単にRT機能について言及しておきます。
RT(リツイート)はTwitter上の投稿方法の一つで、
他人のある投稿の内容をそのまま再投稿して第三者(自分のフォロワー)に広める方法、あるいは他人のある投稿をそのまま引用した上で自分の意見や感想などを書き足して再投稿する方法であり、後者は”引用RT”とも呼ばれます。
特に前者の(自分のコメントを付さない)RTについては、そもそもそのRT投稿自体が誰の投稿として扱われ、誰が投稿の責任主体となるのかが問題となります。
そもそもRT投稿自体が誰の投稿とみなされるのか、すなわちRT投稿の責任は誰にあるのかについては、大阪地方裁判所平成30年(ワ)第1593号、平成30年(ワ)第7160号 損害賠償請求事件(本訴、反訴) 令和元年9月12日付判決が参考になります。
・・・そこで検討するに,ツイッターにおいては,投稿者は,自己の発言を投稿するのみならず,他者の投稿(元
ツイート)を引用する形式で投稿(リツイート)することができるところ,リツイートの際には,自己のコメントを付して引用することや,自己のコメントを何も付さずに単に元ツイートをそのまま引用することもできる。そして,投稿者がリツイートの形式で投稿する場合,被告が主張するように,元ツイートの内容に賛同する目的でこれを引用する場合や,元ツイートの内容を批判する目的で引用する場合など,様々な目的でこれを行うことが考えられる。
しかし,他者の元ツイートの内容を批判する目的や元ツイートを他に紹介(拡散)して議論を喚起する目的で当該元ツイートを引用する場合,何らのコメントも付加しないで元ツイートをそのまま引用することは考え難く,投稿者の立場が元ツイートの投稿者とは異なることなどを明らかにするべく,当該元ツイートに対する批判的ないし中立的なコメントを付すことが通常であると考えられる。
したがって,ツイッターが,140文字という字数制限のあるインターネット上の簡便な情報ネットワークであって,その利用者において,詳細な説明や論述をすることなく,簡易・簡略な表現によって気軽に投稿することが想定される媒体であることを考慮しても,上記のような,何らのコメントも付加せず元ツイートをそのまま引用するリツイートは,ツイッターを利用する一般の閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,例えば,前後のツイートの内容から投稿者が当該リツイートをした意図が読み取れる場合など,一般の閲読者をして投稿者が当該リツイートをした意図が理解できるような特段の事情の認められない限り,リツイートの投稿者が,自身のフォロワーに対し,当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当である。![]()
そうすると,本件投稿においては,本件投稿前後のツイートに被告が本件元ツイートを引用した意図が読み取れるようなものはなく(甲5),他に一般の閲読者をして投稿者が当該リツイートをした意図が理解できるような上記特段の事情は認められないから,本件投稿で引用された本件元ツイートの内容は,本件投稿の投稿者である被告(注:RTした者)による,本件元ツイートの内容に賛同する旨の意思を示す表現行為としての被告自身の発言ないし意見でもあると解するのが相当であり,被告は,本件投稿の行為主体として,その内容について責任を負うというべきである。
判決文の引用が長文になりましたが、要するに
元ツイートをそのままRTした場合には、原則としては、RTした人が元ツイートの内容に賛同し表現行為をしたものと評価され、RT投稿の内容について自らの投稿として責任を負うことになります。
(元ツイートを批判、あるいは議論喚起の目的で引用する目的の場合には、その旨が一般閲覧者に分かるように自らコメントを付して引用RTをすべきということです。)
それでは、RT投稿が民事上の名誉毀損行為に該当するか否か(名誉毀損があったとして被害者に対して損害賠償責任を負うか否か)についてはいかなる基準で判断されるでしょうか。
民事上の名誉毀損行為の成否は、「人の社会的評価を低下させる表現であるか否か」(刑事の名誉毀損罪とは異なり、事実の摘示であっても民事上の名誉毀損は成立します)で判断されますが、この点については、判例の積み重ねにより以下の基準が確立しております。
人の社会的評価を低下させる表現は,事実の摘示であるか,意見ないし論評の表明であるかを問わず,人の名誉を毀損するというべきであるところ,
ある表現における事実の摘示又は意見ないし論評の表明が人の社会的評価を低下させるかどうかは,当該表現についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準としてその意味内容を解釈して判断すべきものと解される。
(以上につき,最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁,最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁,最高裁平成15年(受)第1793号,第1794号同16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻5号1615頁参照)
以上、参考になりましたら幸いです。
法的手続きにおいて名誉毀損の立証については専門的な判断や手法が必要となりますので、弁護士によるサポートを得ることをお勧めします。
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