
3.182020
商取引で契約書を締結する場合、将来のビジネスリスクヘッジをするためにポイントとなる条項が損害賠償責任に関する条項です。
日本の民商法に限らず英米法体系では契約の不履行により相手方に損害を発生させた場合、契約不履行当事者に帰責性がある場合には相手方に対して相当因果関係範囲内の損害につき賠償する責任があることを定めておりますが、契約締結時において予め、将来万一損害賠償責任が自らに発生してしまった場合に、その賠償責任範囲を契約上限定させておくことがリスクマネジメントの上で肝要となります。
英文契約書を読む場合、次の表現が出てきたら損害賠償責任を定める条項になりますので、注意深くチェックしましょう。be liable for (責任の内容) to 相手方当事者
be responsible for (責任の内容) to 相手方当事者
これらはいずれも、自分が相手方当事者に対して、(責任の内容)の損害賠償責任を負うという意味になります。
英文契約書では、responsible よりもliableを用いるほうが多いです。
2020年4月1日から施行される改正民法においては、損害賠償責任の範囲については次のように定められております。
第416条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
そして同条2項の “特別範囲” の責任範囲は、個々の契約締結の目的や具体的事情により判断されるため、契約当事者においてはリスク範囲を予め確定できないという不安定な状況になります。
そこで日本の契約でも、英文契約書でも、契約締結時において合理的な範囲で、予め損害賠償範囲の制限条項を入れることが多く行われます。
よく見受けられる英文条項例をいくつか紹介致します。
In no instance shall either party be liable to the other for loss of profit, or special, consequential ,indirect or incidental damages arising out of breach.
いかなる場合であっても、一方当事者(either party) は他方当事者 (the other)に対し、違反から生じる逸失利益、または特別損害、結果損害、間接損害もしくは付随的損害につき責任を負わないものとする。
loss of profit 逸失利益
indirect damage 間接損害
special damage 特別損害
consequential damage 結果損害
incidental damage 付随的損害
A Company’s maximum liability to B Company shall in no event exceed the amount of the the royalties received by A Company from B Company.
A会社がB会社に対して負う損害賠償責任の限度額は、いかなる場合も(in no event)、A会社がB会社から受領したロイヤリティ額を超えないものとする。
販売代理店契約などによく見られる条項です。
The maximum liability of B shall be limited to the actual amount paid by A to B.
Bが(Aに対して)負う損害賠償責任の限度額は、AがBに対して支払った実際の金額に制限される。
請負契約や業務委託契約(サービス契約)、販売契約等で、実際にBが受領した請負報酬、業務委託報酬(サービス料)、販売手数料の範囲内に損害賠償金額を限定する目的でよく使われる条項です。
契約締結の段階でリスクを精査し修正交渉等を行うことは安定したビジネス運営の上でポイントとなります。
是非お気軽に弁護士までお尋ね下さい。
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