
4.82020
現在の世界的なコロナパニック、及びコロナ不況のもとで多くの企業が経営存続の為に資金調達に追われるなどの苦境におかれています。
資本的体力がある、または株式上場しており市場の評価維持や信頼確保が求められる企業においては現状、「在宅勤務」という形態を採用し平素の雇用関係、及び賃金の維持に努めていますが、企業規模が小さくなるにつれて現状の雇用関係の維持が困難となっているのが実情です。
そこでコロナ不況が長引くにつれて増加することが避けられないであろう整理解雇の適法性の判断基準、及び解雇された労働者のとるべき方法について以下に簡単に言及します。
整理解雇は使用者側(会社側)の経営判断を理由とするものであり、労働者側に解雇事由(職務懈怠等)が無い状況下で行われることから、客観的に合理的な理由が認められない、あるいは社会通念上相当ではない整理解雇については、使用者側(会社側)に解雇権の濫用があるとして無効になると考えられています。
そして近年、裁判所が整理解雇の有効性を判断する際には、以下の4要件を重大な判断要素の一つとして捉えつつ、具体的事情を審理するなかで総合評価をして判断する傾向が強く表れています。
① 整理解雇の必要性があるか
(客観的に高度な経営上の必要性までを求めた判例から、生産性の向上や経営合理化の必要性があれば足るとした柔軟な判例まであり揺れている)
② 整理解雇を回避する努力を使用者側(会社側)が行ったか
(整理解雇前に遊休、余剰資産の売却を行ったか、経費削減措置を講じたか、一時休業等の採用、人材の配転措置の実施、希望退職者募集制度を実施したか、など。近年は希望退職者募集の実施の有無が重視される傾向にある)
③ 解雇者の人選基準や人選基準の運用に合理性があるか
(能力、病欠や休職日数、勤務評価等を人選基準とすることには合理性が認められると判断されることが多い。労働組合員を排除することや性別や信条等での差別的人選は許されない。)
* 非正規雇用労働者を正規雇用労働者に優先して整理解雇対象とすることは、非正規雇用労働者が元来雇用調整的機能を有していたことに照らして、現状では合理性が認められる傾向にある。
④ 整理解雇手続に合理性があるか
(会社側は労働者、あるいは労働組合に対して誠実に協議し説明を行わなければならないと解されている。)
整理解雇が行われる場合、解雇対象者には次のような通知が発令されることが一般的です。
解雇通知書
(労働者氏名) 殿
令和2年○月○日
(会社名)株式会社
代表取締役 (代表者氏名)印
当社は、極めて厳しい経営状況のなかで、これまで工場閉鎖、経費節減、資産の売却、新規採用の停止、希望退職者の募集などを含む様々な経営努力を続けて参りましたが明るい見通しは立っておりません。
当社が経営の再建を図るためには、誠に遺憾ながら人員を削減することが不可欠な状況に至っております。
つきましては、貴殿の雇用の継続はできませんので、就業規則第○条○号に
基づき、令和2年○月○日をもって、貴殿を解雇することをここに通知いたします。 以 上
以下は整理解雇に限らず、労働者が解雇された場合全般において労働者がまずとるべき行動になります。
* 解雇理由証明書等の交付を会社側に要求する:解雇理由を明らかにするため。
* 就業規則の開示を求める(所轄の労働基準監督署での閲覧も可能)
* 労働契約書、給与明細資料の取得・整理
↓
解雇理由に法的正当性があるかどうかを検討し、
(この段階で速やかに弁護士に相談することが大切です)
解雇処分の撤回等を争うこととした場合には、速やかに会社側に対して解雇の有効性を争う旨の通知書を発送する(弁護士に相談済みの場合には、弁護士が代理人として発送することが多い)。
* 雇用保険の仮給付手続を行う(職業安定所):解雇無効を労働審判や訴訟で争う場合に利用できる。ただし訴訟等の結果、復職したり未払い賃金等の支払いを受けた場合には、二重取りとなる部分の給付金については後日返還することとなる。
* 会社側から離職票の発行を受けた場合(会社が発行の求めに応じない場合には所轄の職業安定所において被保険者であったことの確認請求手続きを行い離職票の発行を受ける)、離職事由が自己都合退職等の事実と異なる表記になっていないかを確認し、誤りがあれば異議を述べておくこと。
* 使用者(会社側)から退職届を書くよう指示をされても書かないこと。
* 解雇予告手当を要求したり、退職金を受領することは避け、一方的に送金された場合には返還の意思を内容証明郵便等で表明しておくこと。仮に生活費として使用する場合であっても、発生するであろう未払い賃金の先払いとして受領した旨を予め表明しておくこと。
労働紛争においては、
元々使用者側(会社側)に比べて労働者の力関係が弱いこと、及び
使用者側(会社側)には通常顧問弁護士等がおり、予め法的戦略を検討している場合が多いこと
から、労働者がお一人で戦おうとせずに早期に弁護士に相談することを強くお勧めします。
当職においては、労働事件の着手金につきましては、労働者の皆様各自の月給等を参照として低額に設定して初期負担を軽減し、解決時報酬にて調整させて頂く方法により経済的負担を最小限にする方法をとっておりますので、お気軽にご相談下さいませ。
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