
10.102020
被告人から「先生に出会えて良かった。絶対に更生してみせます。」との留守電メッセージ
先日まで担当していた刑事国選事件は、ある犯罪の常習犯の中高年男性(外見は還暦を明らかに超えているように見えるが、実は当職よりも若い方)で、彼は生きてきた境遇も生活環境もやるせない。
どうしたら再犯を止められるのだろう、と身柄勾留されている被告人と弁護士接見(面会)を通して深く会話をしたが、やはり居所がなく、国民保険証も身分証となるものも何もなく、ネットカフェを日々転々としながら、最低賃金以下のアルバイトで何とかその日を食いつないでいて、将来に諦めしか抱いていないのが根本的原因。
刑事裁判自体は懲役刑ながら無事執行猶予も頂けるも、執行猶予が付いた一因は弁護人が生活保護受給や住居確保への支援を約しているから、という裁判官の判示もあった。
それゆえ、本来であれば刑事裁判が終われば国選弁護人の業務も終了なのだが、被告人の社会内更生までの道筋を作ってやらなければならない。
そのような経緯で、住居がないものの被告人の人生のなかで一番縁があった東京都某区の福祉事務所へ向かい、当職同伴での面接を申し入れる。
今までの経緯、社会内更生のためにはこのままでは絶対にダメで生活保護受給を受けて住居を確保し、定職を得て最終的には生活保護なしで本人が自立できるようにルートを作ることが不可欠であることを担当職員さんに必死に伝える。
幸い誠実な職員さんに担当して頂けて、生活保護が受給できる見込みとなり、またまずは区所定の施設で3カ月間集団生活をして周囲の人々との協調性が図れるかを観察して貰い、その後民間アパートに転居して生活保護を受給しつつ自分で生活して自立の道へ向けて頑張る流れとなった。
書類手続きなどについては担当職員さんと被告人に任せて、当職は次の仕事のために先に退出させて頂いたが、夕方打ち合わせを済ませてスマホをチェックすると被告人から留守電が。
「 今まで国選弁護人の先生方にお世話になる機会は多かったけれど、ここまで面倒を見てくれた先生はいなかったし、誰も生活保護申請の話すらしてくれなかった。先生に会えて良かったです。先生の折角の心を裏切らないようにしっかり更生します。本当に有り難うございました。」
刑事国選弁護で弁護士に支払われる報酬は、弁護士の他の案件と比べるとまさにボランティアなのですが、たかが一介の一弁護士が誰かの人生のやり直しの契機を作れることがあるのが醍醐味ですね。
この留守電にはちょっと泣けました。
今日のことを忘れずに本当にちゃんと更生してくれよヽ(´▽`)/
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