
8.182011
(Facebookに2011,5,15に記載したコラムを転載したものです。)
さて、交通事故で被害者の車両に損害(物損)が発生してしまった場合、どの範囲での損害賠償が受けられるのでしょうか。
この点、実務では、
(1)被害車両が修理不能、あるいは修理費が時価額を上回る場合(いわゆる全損)
→ 事故直前の交換価格をもとに賠償額を算定する。
※ 時価額の算定には、「レッドブック」や「イエローブック」を用いることが多いです。
(2)修理費が時価額を上回らない場合 → 修理費相当額をもとに損害賠償算定を行います。
また、修理を行った後も、なお車の機能、外観が完全に修復せず、事故前と比較して価格低下が認められる場合には、一定範囲に限定されますが、評価損を認めて賠償額を上乗せしている判例も見受けられます。
※ 修理代に対する一定割合の上乗せなどで対応する場合が多いです。
さらに、
(3) 修理不能(全損)で買換えを行った場合には、登録費用、車庫証明手数料、納車被用、廃車被用のうち法廷手数料、相当額のディーラー報酬分、同程度の中古車取得に要する自動車取得税等 ・・・・賠償が認められます。
買換後の車両の自賠責保険料、自動車重量税、自賠責保険料等・・・・賠償が認められません。
なお、上記(2)(評価損)についての判例ですが、大阪地判平成12年9月6日判決では、98年型フェラーリの損傷(修理対応)につき、「(フェラーリの)希少性等を考慮しても、修理費(フロントボンネット)の3割程度を越えるものではない」と判示し、30万円の評価損の補償に限り認めています。
同じく、東京地裁平成12年11月21日判決では、97年式BMWの損傷(修理対応)につき、「修理費用の3割」の306,605円の評価損の補償に限り認めています。
その他、修理費用の1割~2割程度を評価損の補償に限り認めている事例が散見されます(但し、会社の事案が多い)。
以上、簡単ではございますが、ご参考になれば幸いです。
出典)
(財) 日弁連交通事故センター/ 交通事故損害額算定基準ー実務運用と解説-(青い本)
(財)日弁連交通事故センター東京支部/ 損害補償額算定基準(赤い本):弊職も編集に参加しております♪
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