
8.202011
(Facebookに2011,3,1に投稿したコラムを転載したものです。)
◆ 「セクシャルハラスメント」とは、「職場において行われる、相手方の意思に反する性的な性質の言動で、それに対する(相手方の)反応により、(相手方が)仕事をするうえで一定の不利益を与えたり、その性的な言動で職場環境を著しく悪化させること。」(男女雇用機会均等法参照)と一般に定義されています。
例えば、職場における、「顔色が悪いけれど、今日は生理日なの?」、「今日は何色の下着を着けているの?」といった発言、および猥褻なスクリーンセーバーの開示行為は、いずれも性的言動として評価されることになります。
また、相手方が明確に拒否の意思表示をしていない場合でも、言動の性質・内容から当然相手方が拒否することが予見できる場合には、セクシャルハラスメントになり得ます。さらに、問題となっている言動が、職場を離れて得意先への移動中や、接待のための酒宴の席上で行われた場合も、職場の延長上での言動にあたり、セクシャルハラスメントに該当することになります。
参加が原則として義務づけられている社員旅行等の際の言動についても同様です。
また、セクシャルハラスメントは、若い女性のみが相手方となるわけではありません。例えば、中年の女性社員に対して、「まだ生理があるのか。おかしいんじゃないか。俺の女房はとっくに終わっているぞ。」「若い子だったら聞けないが、量は多いのか。」(訴訟となった実例です)等の言動もセクシャルハラスメントとなりますし、女性上司による男性社員へのセクシャルハラスメントの事例も生じ得ます。
◆.セクシャルハラスメントに対する法的責任としては、まず、セクハラ行為者本人については、民事上、不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)、慰謝料請求(同法第710条)等を相手方から請求されることが多々ありますし、さらに行為が悪質な場合には、刑法の強姦罪(刑法第177条。性交渉を強要した場合)、強制わいせつ罪(同法第176条)、公然わいせつ罪(同法第174条)、わいせつ物陳列罪(同法第175条、ヌード女性のスクリーンセーバー表示の場合など)、名誉毀損罪(同法第230条、誹謗中傷行為を公然と行ったような場合)、侮辱罪(同法第231条)、等々で刑事処分を受けるおそれもあります。また、社内的には就業規則や服務規程に従い懲戒処分、懲戒解雇等の処分を受けることがあります。
◆ また、行為者本人にとどまらず、使用者(会社)も職場環境につき適切に配慮すべき義務がありますので、個々の事例の程度によっては、使用者の債務不履行に基づく損害賠償請求(民法第415条)、使用者責任に基づく損害賠償請求(同法第715条)を求められる可能性があるほか、男女雇用機会均等法に基づき厚生労働大臣又は労働局長による報告徴収、助言・指導・勧告を受けるおそれ、さらには、事業主が勧告に従わなかった場合、企業名公表制度の対象となるおそれもあります。
◆ 厚生労働省指針
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/20000401-30-2.pdf
は、
「事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、雇用管理上次の措置を講じなければならない。」
として
(1)セクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、周知・啓発すること
(2)行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等に規定し、周知・啓発すること
(3)相談窓口をあらかじめ定めること
(4)窓口担当者は、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること
(5)相談の申出があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認すること
(6)事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置をそれぞれ適切に行うこと
(7)再発防止に向けた措置を講ずること
(8)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
(9)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益取扱いを行ってはならない旨を定め、周知すること
を掲げています。
※ 以前弊職が、「リスクマネジメント講座(共同執筆)(工学研究社)」に寄稿したものを、法改正等に応じて編集して掲載しました。
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