
12.242011
クリスマス・イブの一日も夕方を迎えました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。
拙宅は全くクリスマス・モードではございませんが、押し入れの奥に、昔、羽田空港のANAショップで購入した「ぴかちゅう・クリスマスバージョン」が転がっていたので、ちょっと取り出して飾ってみました♪
本日は、短いコラムで申し訳ありませんが、交通事故の示談書締結とその後の後遺障害発症について、書いてみたいと思います。
交通事故の損害賠償請求交渉の解決は、その殆どが示談(訴訟外の和解・協議和解)によって解決することが、実際にはその殆どを占めます。
そして、これは交通事故に限らず、一般的な紛争の損害賠償請求交渉にいえることですが、
・ 和解金、解決金、損害賠償金の金額の確定
・ 上記金員受領後は、それ以上の金額の請求を放棄して、示談締結後は一切の請求を行わない旨
(文例: 受領のうえは、この事故の全ての賠償義務者に対してその余の損害賠償請求権を放棄し、裁判上・裁判外を問わず何ら異議の申立て、訴訟の提起等をいたしません。-保険会社免責証書書式、など)
が示談書文面に入り、これを両当事者間で合意することが一般的です。
一旦、両当事者でこのような合意を行い、それを前提として示談金、損害賠償金が支払われた以上、被害者は後日、これを覆すことができないのが原則です。
しかしながら、(稀なことではありますが)示談を締結した後になって、示談当初は予測できなかった、当該交通事故に起因する 後遺障害などが発生した場合にはどうなるのでしょうか。
この点、最高裁判所の判例(昭和43年3月15日付判決)では、次のとおり判示しています。
「一般に、不法行為による損害賠償の示談において、被害者が一定額の支払をうけることで満足し、その余の賠償請求権を放棄したときは、被害者は、示談当時にそれ以上の損害が存在したとしても、あるいは、それ以上の損害が事後に生じたとしても、示談額を上廻る損害については、事後に請求しえない趣旨と解するのが相当である」(原則論)
「(しかし)全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合においては、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであって、その当時予想できなかった不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは当事者の合理的意思に合致するものとはいえない。」(例外論)
すなわち、示談締結時に予想することができなかった後遺障害、再手術等によって生じた損害については、改めて被害者は加害者側に対して、損害賠償をすることができる場合がある、ということになります。
最近は、「示談成立後に後遺障害が発生したときには再度協議する」などの記載が示談書(免責証書)にあることも多いですが、その記載がなくとも、上記判例の理論で救済されることがあります。
しかしながら、交通事故に遭い示談交渉をする場合には、事前に弁護士や、各地の(財)日弁連交通事故相談センターに、示談内容につき相談なさることをお勧めします。
(特に保険会社からの示談金見積額提示の場合、保険会社の内部基準により計上されておりますので、特に慰謝料等につき、訴訟をした場合の裁判所基準より低いことが多いです。)
以上、ご参考になれば幸いです。
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