
12.282011
皆様、年末の深夜にこんばんは。夜冷えておりますが、如何お過ごしでしょうか。
今日は、時刻も遅いので、簡単なコラムを書かせて頂きます。
著作権の存続期間は、よく知られておりますとおり、原則として著作者の死亡から50年間になります。
したがいまして、古美術や仏像、仏典、古典絵画等を扱っている美術館、博物館の個々の作品は、著作権が消滅していることが一般的になるでしょう。
かといって、通常、これら所蔵物を使って写真集を作成する場合、その他メディア報道などのために撮影などを行う場合、著作権が消滅しているからといって、無料で利用できることは極めて稀でしょう。当該美術館、博物館、あるいは個人所有者に対して一定程度の許諾料などを支払うことが一般的に行われます。その許諾料の値段は、露出料や写真集発行部数などによって多寡がが生じるのもまた一般的です。
それでは、著作権が消滅しているものに対して、なぜこのような許諾料を支払うことになるのでしょうか。結論としましては、これは消滅している著作権に基づくものではありません。各作品に対して有する当該美術館、博物館、あるいは個人所有者の、その作品に対する所有権に基づくものであると一般的に考えられます。
所有権は広大な範囲をもつ権原であり、その作品、美術品に対する有体的な排他的支配権限を有することになります。従って、所有者は所有する美術品に対して、公開するか、あるいはそれを禁ずるか、出版を認めるかなどにつき広範な判断権限を有することになりますので、これに基づき、利用を希望する者と、所有者との間で独自に利用契約、許諾契約を結ぶことになるのです。
この点については、「顔真卿自書建中告身帖事件」(最高裁昭和59年1月20日判決)という、「顔真卿自書建中告身帖」を撮影した写真乾版が、何人かの手を経て出版社に帰属し、出版社はこの写真乾版を使用して出版物を発行した場合に、「顔真卿自書建中告身帖」の原物を所蔵している財団法人が所有権侵害を理由に出版物の発行の差止及び出版物の廃棄を求めたという興味深い事件があるのですが
⇒ 著作権の消滅後は、著作権者の有していた著作物の複製権等が所有権者に復帰するのではなく、著作物は公有(パブリック・ドメイン)に帰し、何人も、著作者の人格的利益を害しない限り、自由にこれを利用しうる。
として、所有者(財)の差止を棄却しております。
この判例は、所有権と著作権の差異を把握するうえで興味深い判例ですので、また機会がありましたらコラムにしたいと思います。
ご参考になりましたでしょうか。
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