
4.252012
日付変わりまして、週半ば水曜深夜、皆様いかがお過ごしでしょうか。
弊職は明日、離婚絡みの事案の証人尋問がございまして、本日午後終日、その打合せを行っておりました。
本コラムはServerErrorによる再掲(弊職の記憶の再現)になります。
本コラム末尾に長文ながら、コメントを頂戴した多くの皆様へ事情、そして深くお詫びを申し添えます。(正直、プログラム能力の無さを恥じ、Webを運用する限りきちんと勉強しておかねばと痛感しております。この経験はまたプログラム訴訟に活かしたいと思っております。)
★ 証人尋問が行われるタイミング ★ (訴訟一般につきまして)
訴訟は、一般的に下記のような流れで行われます。
原告による訴訟提起(訴状陳述) ⇒
被告による答弁書提出(訴状に対し、「ここは争いがない」「この事実は合っている」「ここは事実と異なる」等の認否=仕分け作業です)⇒
それに対する原告の認否・反論(準備書面提出) ⇒
これに対する被告の認否・再反論(準備書面提出) ⇒・・・・
このような流れが繰り返されていくなかで、本件訴訟で争われていない事実や法的論点は「削ぎ落とされ」、当事者間で「争いとなっている事実」、「争いとなっている法的争点」が明確になっていきます。
この段階で通常、裁判官の訴訟指揮により、一旦、和解が出来るかどうか試みられることが多いですが、双方の主張等に開きがある場合は、和解は難しいということになります。
その場合には、争点を明確にしたうえで、主張や証拠等が出尽くしたことを双方当事者に確認のうえ、(必要に応じて、「争点整理メモ」を作成し、両当事者にお渡しになる裁判官もいらっしゃいます)、ほぼ最終的局面に証人尋問が入ります。
そういう意味では、証人尋問は、裁判官が心証形成をする最終確認手段とも言えるかと存じます。
★ 証人に誰を立てるかの難しさ ★ (当職の経験談です)
ここで、一つのエピソードをお話しさせて頂きたいと存じます。
ただし、弁護士には守秘義務がございますし、先方原告弁護士さん(複数名の方々・・小さな弁護団でした)の失礼にも当たりますので、 詳細までは申し上げられませんがお許し下さいませ。
それは、某建築案件で、私はハウジングメーカー側の被告代理人、原告さんはある戸建ての所有者、お施主さんでいらっしゃいました。
その建物は、いわゆる今流行りの、断熱材パネルを用いた高気密・高断熱建物でしたが、建築から10年程度経たのちに、シロアリ被害が発生しておりました。(日本では、ヤマトシロアリとイエシロアリが生息しており、いずれも地中から食い上がって行くのが一般的です。)
当初、本当に色々なことが原告さん側から主張され、また主張自体も、裁判が進むにつれ、次第に拡がったりとかなり苦労した案件でございました。
原告さん側のご主張の真意は正確には分かりませんが、被告側としては、当該建物は、本質的には在来木造軸組工法(右上図)と変わらないこと、また、建築当時の10年前時点における防蟻処理として、一般水準に照らし適切に行っていたので、被告側には当該シロアリ被害発生には責任がない(当時要請されるべき水準の防蟻処理を行ったという点で、義務を果たしている)こと、などが争点となると把握しておりました。
なお、 現行も殆ど変わっていないと思いますが、少なくとも当時適用されておりました下記条項には、防蟻処理の方法として、次のようにかかれております。
建築基準法施行令第49条第2項
『構造耐力上主要な部分である柱、筋交い及び土台のうち、地面から1メートル以内の部分には、有効な防腐措置を構ずるとともに、必要に応じて白蟻その他の虫による害を防ぐための措置を構じなければならない。』
また、当時の公庫仕様書(設計図書を形成)の内容も、ほぼこれに準ずるものでした(現在は、防蟻処理について記載方法がやや変更となっていると当職は把握しております)。
ざっくばらんに申し上げますと、土台や地面から1メートルまでの主要な木材には、防蟻処理(一般的に薬剤塗布、土台には薬剤注入)を行いなさい、ということです。 そして、本件建物について、当方被告側は、この処理通りの防蟻処理を行っておりました。
以下は、あくまでも弊職の見解に過ぎませんが、私が原告側の立場にもし立ったとするならば、
・ 本件建物が純粋に在来木造軸組工法の建物とはいえず、防蟻処理も建築基準諸法が要求しているものでいいのかどうか、あるいは、
・ 被告側企業の規模や組織等に応じて、一般的水準より高い水準の防蟻処理が求められるのではないか、
等々の反論を用意するかと思います(それが正しいかどうか、まだ弁護士11年目の私見ですので、十分異論はおありかと存じます)。
これは医療事件で、 個人医院と、それなりの病床数がある総合病院等では求められる医学水準が同じとはいえない、と判断されるのに似ていると思います。
ところが、原告さん側の主張は、次第にずれていき、そもそも当時行われていた(今も同様の方法で行われているのが一般的ですが)、前述の薬剤塗布の方法が間違っているのではないか、という方法に進んでいきました。
そのようななかで、訴訟は証人尋問に進んだのですが(その前段階として、原告さん側は、抜粋もラインマーカーも引くことなく、とある防蟻処理の書籍を一冊まるごと証拠提出したものですから、私は丸ごと読む羽目になり、シロアリ博士になりました♪)、
防蟻処理では当時、先進的な工法といえる(今もその傾向はあると思いますが)ベイト工法を主張していた専門業者(雑誌等に記事を寄稿していた著名な方でした)を証人に立てました(裁判慣れされている方です)。
ご参考までに、ベイト工法とは、建物に薬剤を塗布するのではなく、シロアリ対策は、当該建物周囲の環境を調査し、シロアリの生態系を把握し、建物周囲自体にシロアリが近づかないように、何箇所かにシロアリを集合させてこれを退治する、といった方法です(私の素人理解ですので、正確ではないですがご容赦下さいませ。)
証人の方は、他の訴訟等でも証人で出ていらっしゃる方のようで裁判慣れしていらっしゃり、ご自身の提唱する理論を、言葉は適切ではないかもしれませんが滔々と証言、というよりご主張されていらっしゃいました。
初め、証人を呼んだ原告さん側の弁護士複数名が証人に色々質問をなさり、証人の専門知識を引き出していらっしゃり、次ぎに、被告側である当職が質問させて頂く番になりました。
質問の初めの方では、証人に色々その専門知識を改めて伺う、ということをしておりましたが、途中に一つだけ罠(と申したら生意気ですが)を仕掛けておりました(ちなみに、なかなかこれには引っかかって下さいません・・通常・・そもそも罠自体が見つからない案件も多く・・)。
私 「ところで証人は、防蟻処理業界では先進的な御専門知識をお持ちになる専門家でいらっしゃいますよね。」
証人 「(ご気分が少し宜しかったご様子で)まあ、そうだと自負しています。」
私 「証人がご提唱されている、このベイト工法を、日本で実施されている方は、どの位の人数いらっしゃるのですか?」
証人 「数人だと思います。」
私見では、この証人尋問は、これで十分だと思いました。
原告さん側が主張しておられる防蟻処理方法は、少なくとも建築当時の10年前は、その業界においても、まだ特殊な、極めて先進的な工法であり、一般の建築業者に要求される水準工法で無いことが明らかになったと思ったからです。
幸い、御担当裁判官も同様にお考え下さったようで、原告さん側の請求金額は大変大きかったですが(建物建て替え自体を想起しておられたので)、被告には一切損害賠償支払義務はなし、との判決が下りました。
ただこれは、あくまでその裁判官のご判断であり、他の裁判官のご判断では変わった可能性も十分あると思います。また、恐らく現在は、何らかの責任を問われる可能性も高い(防蟻処理業界での様々な工法の広がりもでてきたので)と思います。ラッキーな側面もあったと思います。
その後、原告さん側は、本件事案につき控訴し、高裁で、地裁の証人申請は誤っていたので、新たな専門家の証人申請をしたい旨主張なさいましたが、当方側は、原告さん側が自らのお考えで立てた証人の主張につき、それを覆すのはおかしい、といった意見を上申し、結局高裁は新たな証人を採用せずに、一回の期日で事件を終結し、地裁と同様の判断を下しました。
この案件は、私自身にとっては色々な意味で大変勉強・経験になりましたが、同時に、証人申請には本当に慎重を期さなければならない、と再認識させて頂いた事案でございました。
まだまだ弁護士11年目の 若造が長文失礼致しました。
また、ベテランの先生方がご覧になったら、私見の方が間違っているとご判断なさる方も多くいらっしゃるかと存じます。
ただ、案件としては、興味深い内容でございましたので、アバウトで恐縮ですがご紹介させて頂きました。
ご参考になりましたら幸いです<(_ _)>。
(お詫び)
当サイト、「法律のひろば」( http://shoh.info/ ) が、一昨日よりServerError500に見舞われまして、先程外食中、素人考えで、過去のデータに一旦リストアしても修復できず、また最新のデータにリストアする手法を取りましたところ、一部保存されておりましたコラムが喪失されてしまいました。また、それに伴い、リンクErrorをFaceBookページに吐きだしたことから、FaceBookページに頂戴した記事自体が消滅してしまいました。
貴重なお時間を頂戴し、沢山のコメントを頂戴しておりましたのに、本当に申し訳ございません。 重ねてお詫び申し上げます。
なお、ServerErrorにつきましては、レンタルサーバー会社よりサポートメールが参りましたが、型通りのもので大変失望しております。
このトラブルにつきましては、プロにお任せしたいと考えております。
なお投稿自体には支障が生じておらず、本家に頂戴するコメントにつきましても新規plug-in対応にて対応してございますので、ご遠慮なくコメントを頂戴できましたら幸いです。
誠に申し訳ございません。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
Copyright © 法律のひろば /弁護士 莊 美奈子 All rights reserved.